とはいえ、現在のクルーズ客船は横揺れをコンピューターで制御するフィン・スタビライザーが完備されており、
時化(しけ)にでも遭遇しない限り大きく揺れることはない。フィン・スタビライザーは、船の側面から魚のヒレのように海中に
張り出した翼で、横揺れを防止する画期的な装置。
日本人の発明によるもので、フィンによって生じる揚力を利用して船の安定性を保つ。
ほとんどのクルーズ客船には完備されている。
また、縦揺れについては船の大型化が波動を吸収して、揺れを少なくするので大きな船に乗るのも船酔いから遠ざかるための一案でもある。
こうした横揺れ防止装置の完備や大型化によって、大きな揺れを感じさせない航海が普通になってきた。
ワインを注いだグラスはピクリとも動かず、動いているのも感じさせないほど揺れの少ない航海が多くなっている。
「クルーズは毎日が海の上。限られた場所で変化が少ない。もう退屈してしまう・・・・・。」
これは乗船前の多くの人の心配ごと。さらに、「そこそこの料金を支払った上に退屈するのはもったいない」という
損得勘定が働いているのかもしれない。
結論を言えば「退屈」はまったくの偏見。陸の上の偏見。
「退屈するから・・・」と分厚い推理小説を持ち込んで1ページも開かなかったり、
手紙を1枚も書かなかったというのがクルーズの日常だ。
何ら珍しい話ではない。むしろ、退屈する時間を創りだすことのほうが難しいといえるだろう。
洋上のゆるやかな時の流れも「退屈」を解消してくれる。大空と航跡を眺め、波の音を聴いているうちに、 実は何もしないことがこの上ない快適さになってくるもの。陸上での煩わしさや些細な事柄が考えられなくなって、 スローライフの豊かさが実感できるというもの。 さわやかに揺れる「揺りカゴ効果」の癒し作用もあって、五体五感ともに乗船前の退屈への不安を解消してしまうはずである。
「クルーズ」という言葉で連想されるのが「豪華」。
さらに「タキシード」→「イブニングドレス」→「ベルサイユ宮殿の夜会のような華麗なパーティー」・・・。
船の旅は、貴族階級のステータスシンボルだった夜会や映画に登場する昔の豪華客船のワンシーンを連想させがち。
実は、こんな連想ゲームがクルーズへの乗船を躊躇させているようでもある。
・・・現実はカジュアルで、リラックスした雰囲気なのだが。
服装によってキャプテンから下船を命じられることはあり得ない。
お客様相互で楽しい雰囲気を創りだすレジャー、リゾート、社交の場なので、
どんな服装であろうと、エチケット違反にならない程度、TPOに則したファッションならば、特に神経をとがらせることもない。
それよりも、ファッションを楽しむ場所として、特に女性にはクルーズをお薦めしたいもの。
クルージング中の服装は昼間はカジュアル、スポーティータイプで十分。
夕方から就寝までの夜間はディナーや船長主催パーティーなどが開かれてドレス・コードが設定される。
ドレス・コードは前日、キャビンに届けられる船内新聞で案内される。ドレス・コードは「フォーマル」、
「セミフォーマル(インフォーマル)」、「カジュアル」の3タイプ。一応の目安をご紹介しておこう。
ドレス・コードは通常、出港3週間前に配布される日程表にフォーマル回数が表示される。
また、航海中はリラックスした雰囲気を盛り上げる一案として「スマートカジュアル」といったおシャレな
カジュアルスタイルを楽しむこともある。60年代ファッションとか、
服装のどこかに赤を使うといったテーマを楽しむドレス・コードが企画されたりする。
いずれも、気軽におシャレをエンジョイするのが目的である。
「ルーズ客船に等級があるんですか?」。・・・・「船酔い」、「退屈」、「服装」などとならぶ"古典的"な質問の一つである。
結論からいえば、等級はない。世界のクルーズ客船はすべてモノ・クラス。航空機のような等級はない。
ただし、キャビンにはグレード(カテゴリー)がある。
でも、これは等級ではない。キャビンの差であって、キャビン以外のパブリックスペースは誰もが自由に行き来できて、
いっさい差別なく、自由に使える。ホテルと同様である。
健康・ウェルネス、癒し、スローライフ、自然、大空間、人間性回復、安全、選択、自由、愛情確認、 心の触れ合い、共生・・・・現代社会が求めているキーワードがクルーズという時間と空間のなかにあふれていることが、 クルーズの大きな社会的な価値である。